今朝、宿の共有スペースでお気に入りのカフェスタンドのアイスラテを飲んでいたら、一人の男性が通りかかった。「あれ?日本人客いねえなー」なんてぼそりと言うもんだから、「はい?」とボクはつい反応してしまった。そこから、会話が始まった。
その男性、気さくで悪い人じゃないんだけど、どうも自分の話が好きみたい。こっちの話は右から左へすり抜けていく感じで、自分の話ばかりが流れてくる。なんでも、この宿の常連らしい。チェンマイに行くかどうか迷ってたらしいけど、結論は「寒いからやめとく」だそうだ。寒い場所に行かないという選択をするのは普通のことだけど、それをわざわざ話題にするあたり、やっぱり自由人っぽい。
「寒いからやめとくんだよ」と、どこかさっぱりとした声色で言うその姿は、まるで冬の風を避けて枝を曲げる木のよう。迷いはなく、ただ自然に選んだ道のようだった。
それだけじゃなくて、驚いた話をしてくれた。脳梗塞をやってしまって、簡単な計算ができなくなったらしい。「30÷10が分からないんだよ」って笑いながら言う。でも、そんな状況でもタイまでやってきて自由に暮らしてる。普通、不安や心配がぐるぐる巻きになるんじゃないの?でも彼はその重たいリュックを軽々と背負っているみたいに見えた。すごい。
そんな彼に、今日は朝飯に誘われた。「この宿から歩いて30分くらいのシーク教寺院で無料朝食が振る舞われるんだ」って。ずっと行きたいと思ってたんだよ、それ。でもボクにはある事情がある。そう、カビンチョ。朝飯を食べると必ずお腹がぐるぐるして、1〜2時間トイレから出られなくなる。トイレがない場所でこの状態になるなんて、想像しただけで胃がキリキリする。だから泣く泣く断った。
でも彼、別れ際にこう言った。「今度、安い飯屋教えてやるよ。他の宿に泊まってるけど、この宿に戻るとき教えてやるからな。毎日空室ないか聞きに来てるから、会ったらまたな!」だって。なんだか小さな楽しみがひとつ増えた朝だった。
2024/12/18