ボクたちはその日、田中さんお気に入りのオムライス屋さんに行くことにした。なんでも、細い路地の奥にあるピンクのかわいいお店らしい。そんなことを聞かされたら行かずにはいられない。宿を出て、田中さんの後をついて歩く。狭い路地が続いてるけど、これ、日本だったら「通行禁止」じゃないかな?って思うくらい。しかもやけに長いんだよね。路地を抜けると、目の前にはピンク色に染まった内装が迎えてくれるお店が現れた。
店に入って、二人とも迷わずオムライスを注文。しばらくして運ばれてきたオムライスは、見るからに美味しそうで、バターの香りが食欲をそそる。一口食べた瞬間、ボクの中で何かが弾けた。「美味い!」。このバターの効き具合、絶妙だ。それに加えて、日本にはないような不思議な風味がふんわり広がる。まるで旅の香りがそのまま味になったような感じだ。そして、オムライスの具材はシーフード。こんなの見たことない。新しい発見に心が躍る。
田中さんはオムライスだけじゃなく、スムージーも頼んでた。でも、出てきたストローが細すぎて、なかなか飲めないらしい。「吸っても吸っても飲めない!」って言ってて、二人で大笑い。仕方なく店員さんを呼んだ田中さんが「このストロー…」って指さした瞬間、店員さんが「あー!細いね!」って笑ってた。で、普通にカウンターに太いストローが置いてあるのに、なぜか「Just a moment, please」って言いながら通りを挟んだ向こうの店に取りに行ったんだよね。なんで?ってまた二人で爆笑。こんな些細なことで笑えるのも、旅ならではの楽しさかもしれない。
思い返せば、この宿には最初の2~3日だけ泊まるつもりだった。しかも、もともとは別の宿が目当てで、たまたま通り道で空室を見つけて入っただけ。でも、その居心地の良さにすっかりハマって、気づけばもう4週間目。田中さんも同じことを言ってた。「あの宿、居心地良すぎて、もう2か月だよ」って。
安い個室とほどよい距離感の共有スペース。たまに誰かと話して、たまに一緒にご飯に行く。そのちょうど良いバランスがたまらなく心地いい。そんな宿と、バンコクを明日で発つ。次の目的地はインドのコルカタ。どんな街なのか、想像するだけでワクワクする。
田中さんとの笑い声が、旅の終わりに優しく響いている。