今日もガンジス川をぶらぶら歩いた。チャイを片手にぼーっと景色を眺める。ただそれだけの時間が、この場所では贅沢になる。ガンジス川沿いはまるで時間が溶けていく川。何も考えず、ただ漂っていた。
しばらく歩いていると、一人のおみやげ物売りのインド人が話しかけてきた。「またか」と思いながらも、ボクはキャッチセールスが嫌いじゃない。むしろ楽しむ性格だ。日本だと違うんだけど、インドだとなんだかそのしつこさも風景の一部に思えるから不思議だ。
「どっから来たの?」と聞かれ、「日本だよ」と答えると、彼はちょっと得意そうに日本語を披露してきた。「こんにちは」「ありがとう」「高い!」なんて単語が飛び出す。日本語を少しだけ話せるインド人に会うたび、ちょっとした親近感が湧くのはボクだけだろうか。
営業トークが続いたけど、適当に冷やかしながら「でも要らないよ」と返すと、いつの間にか話題はお土産からインドの文化やバラナシの話へ。会話が弾んで「座って話そうぜー」なんて流れに。
途中、彼の友達が現れた。これがまた自由すぎて面白い。「お前は金持ってるか?」といきなり聞いてきたので、「いや、持ってないよ」と答えたら、大げさに肩をすくめて「俺は金を持ってないやつとは話さない!」と叫び、大きな身振りでボクを追い払う仕草。笑いをこらえきれないボク。正直にもほどがある。
そんな彼らの間で、気づけばボクは優越感に浸っていた。キャッチにも嫌な顔をせず、こうしてのんびり会話を楽しむ自分。実際、他の観光客たちはみんな「いやいや!」と手を振って逃げていくのに、ボクはここに座っている。この性格、ちょっといいかもな。
ガンジス川の夕陽がオレンジ色に変わるころ、ボクは「またね」と手を振って立ち上がった。自由で正直すぎるインド人たちとの時間は、何とも言えない濃さだった。そして、そんな彼らを見て笑っている自分も、インドという場所に溶け込みつつある気がした。
今日もガンジス川が静かに流れている。