日曜日。
なんとなく空気を変えたくなって、ずっと気になってたLINEスタンプ作りに手を出してみた。とはいえ、最初の一歩がなかなか重たい。イラストはスッと決まったのに、問題はセリフ。
「日常使いがいいのか?」
「いや、ネタ全開で攻めるか?」
「特化型にしてオタク界隈狙う?」
あれこれ考えてるうちに、気づけばペンが止まってた。まるでメニューが多すぎて決められない食堂の前で立ち尽くす、優柔不断の客。
そんな時ふと思い出したのが、あのマーク・ザッカーバーグの言葉。
「完璧を目指すより、まず終わらせろ」
まるで、頭の中の片づけられない引き出しを一つだけでも閉じてくれたようなセリフ。深呼吸して、よし、完成を目指そうと決めた。
作ってるうちに、なんだかテンションが上がってきたんだよね。で、思わず元嫁ちゃんにLINE電話をかけて、作ってる最中のスタンプについて語ったら——
「いらん、笑」
の一言。心に冷たい風が吹いた。先行テストでまさかの撃沈。見込み客、マイナス1。
そのあとも、せっせとイラストの練習をしてたんだけど、まあ線が曲がる曲がる。真っ直ぐに引けないし、丸もゴツゴツしてるし、始点と終点が仲悪いみたいに離れていく。手元で暴れるペンは、まるで反抗期の中学生。
でもね、ふと気づいたの。
あの「下手くそ」なLINEスタンプ、たまに見るでしょ?
あれ、本当に下手な人が描いてるんじゃないんだなって。線はぶれてないし、始点と終点もピタッと手をつないでる。歪み方にも計算がある。つまり、あれは“わざと下手っぽく”描いてる。玄人の仕業。なるほどねって、ひとりで納得してた。大人のトリックにやっと気づいた気分。
こんな風にボクのスタンプ制作初日は、迷いと発見と、少しの傷心でできていた。
ペン先と気持ちはまだまだブレてるけど、とりあえず最初の1歩は踏み出せたと思う。