昨日は、通院日だった。
正直、前日の夜までは行く気ゼロだったけど、終わってみれば「あー、行ってよかったかもな」って、しみじみ思った。思わぬ収穫がふたつあった。
ひとつ目は、自分の病気について。ボクはもうずっと、「ホントにボクって統合失調症なのかな?」って疑ってた。自分のことながら、ちょっと普通っぽいし。幻覚はあったけど、ステレオタイプな「統失の人」とはなんか違う気がしてた。で、仕事してないのも、実はただの怠けなんじゃ…?って、自分で自分に懐疑的だった。まるで自分の中にいる探偵が、サボり魔の容疑者を取り調べしてるような感じ。
そんな話を、ふと診察中に先生にしてみた。そしたら先生が、「健常者が今の注射打ったら、たぶん日常生活まともに送れないですよ。わあすけさんは統合失調症で間違いないと思います」って言ったのだ。さらっと、でも断言口調で。
……なるほど。そっか、そういうことか。なんだか、肩の力が抜けた。病名に納得したのは初めてかもしれない。ドアの向こうでずっとガチャガチャ鳴ってた音が、ようやく止まったような心地。
さらに先生は続けて、統失ってのは脳内でドーパミンがドバドバ分泌される病気なんですよ、って教えてくれた。え、それだけ?って思った。深刻そうな名前のくせに、実態は「脳内で盛大にお祭りが開かれてる」ってだけらしい。ボクの中のイメージでは、カラフルな紙吹雪が脳内を舞ってる感じ。なんだ、そんなことか。思想がおかしいとか、性格が破綻してるとか、そういう話じゃなかったんだ。
で、もうひとつ。昨日の通院で思ったのは、先生って意外といい人かもってこと。
この先生に代わってからもう1年くらい経つけど、最初はちょっと苦手だった。なんか無理に距離を縮めてくる感じがあって、うっとうしいなって思ってた。趣味聞いてきたり、旅行の話をしたら「カシミールいいっすよね」って、え?インド通っぽさ急に出してくる感じもどうも怪しかった。こっちはただのアジア旅行ですけど…って気持ち。
でも昨日は違った。ボクの悩みを、ちゃんと受け止めて、優しく、わかりやすく話してくれた。その姿が、ちょっとだけ「この人、もしかして愛ある人なんじゃ?」って思わせた。人の印象って、ほんとに一瞬で変わる。心の中の天気予報が、ぱっと晴れ間に変わるように。
通院日って、ただ病院行くだけの一日だと思ってたけど、昨日はちょっとした「脳と心の棚卸し」みたいな日だった。薬も大事だけど、言葉だって立派な処方箋。そんなことを思った帰り道。